メルセデスが刻む新たなスーパーカー伝説
公道を走る特別な高級スポーツカーのことを"スーパーカー"と呼ぶなら、まず間違いなく、メルセデス・ベンツ300SLはスーパーカーの元祖であった。そのデビューは、なんと1950年代のことである。それから半世紀以上も経ったいま、メルセデスから新たなスーパーカー伝説が生み出された。SLS AMG。300SLにインスパイアされた正統派のガルウィングをもつ、現代のスーパーカーである。
フロントミッドエンジン、リアドライブの2シーターFRスポーツカーで、ボディ骨格は非常に軽いアルミスペースフレームでできており、これまでのAMGモデルのようにベンツのノーマルラインアップとの関連性は全くない。
エンジンは、これまたAMGが独自に開発した6.2リッター自然吸気V8エンジンの発展系であり、他の63モデルとは違ってドライサンプ化したことで、非常に低い位置に搭載できるようになり、スポーツカーに重要な低重心化にひと役買っている。
AMGの40年以上にもおよぶモータースポーツ活動とスペシャルカープロデュース力が生み出した、2010年最注目の傑作スーパーカーだ。
リアアクスルに置かれ(トランスアクスル方式)、トルクチューブ内のカーボンシャフトによってM159 6.2リッターV8ユニットに繋がっているのは、デュアルクラッチシステムのAMGスピードシフトDCT 7速スポーツトランスミッションだ。ドライバーは、C(ノーマル)、S(スポーツ)、S+(スポーツプラス)、M(マニュアル)から走行状況に応じて好みのモードが選べ、レース・スタート機能を使えば最大限に効率的なスタートダッシュが可能となる。
ロック解除時には、ドア中央部からノブが突き出ており、これを引っ張り上げるようにしてガルウイングを開ける。高いシルは、まず片足を入れ、お尻を滑らしてシートに落とし、それから畳んだもう片方の足を車内に引き入れる、といった所作が正しい。少し背を伸ばしてドアを閉めなければならないのが面倒といえば面倒。ちなみに、出るときはくれぐれもドアの底辺に頭をぶつけないように・・・。筆者は2度ほど、アメリカと日本で、こっぴどくぶつけて、くらくらした。
スポーツシャシー仕様(AMGパフォーマンスパッケージ装着モデル)とノーマル仕様の両方に試乗することができた。結論から言うと、よりスーパーカーらしいのはスポーツシャシーながら、それなりに使いこなしたいなら絶対ノーマルだ。
両者に共通しているのは、驚く程ニンブルなフロントの動きである。あまりにダイレクトかつシャープに長いノーズが動くため、助手席の人でもその異様さに気づくほど。しまいには酔ってしまうほどだから、デートカーとして使う場合、ステアリング操作はくれぐれもそうっと。
で、スポーツシャシーはどこまでもハードでフラットである。だから余計にノーズの動きが早く感じられる。一方、ノーマルは、そこに一瞬のためがあり、また向きを変えたあとも、わずかにロールが残るから、曲がっている感覚が自然である。そのぶん、実はヘタクソなドライバーでもクルマについていく余裕が生まれるので、運転そのものも楽しめた。足が硬いと、運転は難しい、のだ。
マッスルアメリカンV8のように、おどろおどろしいエグゾーストノートは、イタリアンスーパーカー系とはまた違う雰囲気だが、ドライバーの気分を盛り立てるという点で、勝るとも劣らない。エンジン始動時などは、ものすごい迫力で地を震わせる。
FRスポーツカーとして、とても優秀なハンドリングカーでもある。お尻の真下にあるかのような後輪を基点に、長いノーズを竿のように振り回して楽しむドライビングには、ミッドカーとはまた違うファンがあった。
(Car@nifty)



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